ベトナムにおいて、改正知的財産法が2026年4月1日より正式に施行されました 。今回の改正は、審査プロセスの効率化と保護対象の拡大を柱としており、日本企業にとってベトナムでの知財戦略を加速させる大きなチャンスとなります。特に実務への影響が大きい「審査期間の短縮」を中心に、改正のハイライトと企業が享受できるメリットを解説します。1. 審査・登録までのタイムラインが劇的に短縮今回の改正で最も注目すべきは、商標・特許・意匠のすべての分野において、権利化までの期間が大幅に短縮されたことです。主な変更点一覧項目改正後の期間(実体審査)従来の期間商標公開から 5ヶ月公開から 5ヶ月9ヶ月特許公開から 12ヶ月公開から 12ヶ月18ヶ月意匠公開から 5ヶ月公開から 5ヶ月7ヶ月また、方式審査において「方式受理決定」の発行プロセスが廃止され、出願が公開リストに掲載された時点で方式的に有効とみなされる運用へと簡略化されました 。2. 期間短縮がもたらす3つのビジネスメリット審査期間が短くなることは、単に「早く登録になる」以上の戦略的価値があります。市場参入の早期化と安全確保商標登録が迅速化されることで、ブランド展開の直前でも権利確保が間に合いやすくなります。模倣品リスクを抑えつつ、安心して新製品を投入できます。迅速な権利行使(エンフォースメント) ベトナムでは権利行使に登録証(Certificate)が不可欠なケースが多いですが、登録公告までの期間も従来の60日から30日へと短縮されています 。これにより、侵害品への法的アクションをより早い段階で起こすことが可能になります。コストとリスクの低減 特許の異議申立期間が大幅に短縮(特許:9ヶ月→3ヶ月 )されたことで、権利の安定性が早期に確定します。不確実な期間が減ることは、事業計画の精度向上に直結します。3. その他の重要なアップデート手続き面以外でも、現代のビジネス環境に合わせた重要な改正が行われています。非物理的意匠の保護GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)などの非物理的なデザインも新たに保護対象となりました。デジタルサービスを展開する企業には朗報です。意匠の新規性喪失の例外(グレースピリオド)の拡充自らによる開示から6ヶ月以内の出願であれば、形態を問わず新規性が維持されるようになりました(従来は特定の展示会などに限定)。損害賠償額の上限引き上げ侵害に対する法定賠償額の上限が引き上げられ、抑止力が強化されています。例えば、算出困難な物的損害の賠償額は最大10億ドン(従来5億ドン)まで認められるようになります。おわりに今回の改正により、ベトナムは「権利を速やかに取得し、強力に守る」ことができる環境へと進化しました。一方で、異議申立期間の短縮などは、他社出願の監視(ウォッチング)をより迅速に行う必要があることも意味しています。TANAKA Law & Technologyでは、今回の改正を踏まえた最適なベトナム知財戦略のご提案が可能です。現地実務の詳細や具体的なお手続きについては、お気軽にお問い合わせください。「ベトナムの知財環境は今、大きな転換点を迎えています。スピード感のある法整備は、テクノロジーやブランドを武器にする企業にとって強力な追い風となるでしょう。我々も、最新の現地情報を武器に、皆様の東南アジア戦略をバックアップしてまいります。」