商標を出願したり、無事に登録証が届いて安堵したりしているタイミングで、見知らぬ機関から「請求書」や「登録案内」のような郵便物やメールが届くことがあります。「あ、手数料を払い忘れていたのかな?」 「海外で登録するにはこれが必要なのかな?」と、慌てて支払ってしまう前に、ちょっと待ってください。 実はそれ、商標権者を狙った詐欺(Scam)や、公的効力のない民間サービスへの勧誘である可能性が非常に高いです。今回は、アメリカ(USPTO)からの公式な注意喚起も踏まえ、日本国内および海外で商標を持つ皆様が被害に遭わないためのポイントを解説します。なぜ、詐欺師に住所がバレるのか?「なぜ自分の住所や出願番号を知っているの?」と不気味に思うかもしれません。 しかし、商標制度はその性質上、出願人や権利者の情報は公開公報として誰でも閲覧できる状態になります。詐欺業者は、公開されたデータベース(日本のJ-PlatPat、米国のTSDR、WIPOのMadrid Monitorなど)からデータを吸い上げ、それらしい請求書を大量に送りつけているのです。よくある手口のパターン世界中で手口は共通しており、主に以下の3つのパターンが見られます。1. 特許庁やWIPOに似せた「なりすまし」最も悪質なのが、各国の特許庁やWIPO(世界知的所有権機関)のロゴや名称を巧みに模倣した請求書です。事例: 米国ではUSPTOの名称を騙ったり、非常に似た名前の組織名を名乗ったりするケースが多発しています。対策: 米国特許商標庁(USPTO)も公式ページで注意喚起を行っています。2. 公的効力のない「民間カタログ」への掲載勧誘「Global Trademark Database」のようなもっともらしい名前の民間業者が、「あなたの商標をデータベースに登録します」として高額な掲載料を請求してくるケースです。注意点: 支払っても、単にその業者のウェブサイトに載るだけで、法的な権利保護には一切寄与しません。3. 「期限切れ」を煽る緊急通知「更新期限が迫っています」「誰かがあなたの商標を侵害しようとしています」といった不安を煽る文言で、不当に高い手数料での手続き代行を迫るケースです。日本国内の事例日本でも、特許庁(JPO)とは無関係の団体から、「商標登録料」や「更新登録料」といった名目の振込用紙が送られてくる事例が報告されています。 一見すると公的な書類に見えるため、経理担当者が誤って振り込んでしまうケースが後を絶ちません。「怪しい」と思ったら確認すべき3つのポイントもし手元に不審な通知が届いたら、以下の3点をチェックしてください。送付元の名称と住所は正確か?本物の特許庁(日本国特許庁、USPTO、EUIPOなど)やWIPOからの通知か、一字一句確認してください。微妙にスペルが違ったり、住所がレンタルオフィスだったりすることがあります。管理を依頼している「代理人」経由か?弁理士に手続きを依頼している場合、特許庁からの重要な通知は、原則として代理人(弁理士事務所)宛てに届きます。出願人に直接、海外から英語の請求書が届くことは、マドプロ出願などの一部例外を除き、通常は詐欺や勧誘です。「Publication(掲載)」や「Directory(名鑑)」という言葉がないか?小さな文字で「これは請求書ではなく、カタログ掲載のオファーです」と書かれていることがよくあります。まとめ:支払う前に必ず相談をこれらの詐欺は、一度支払ってしまうと取り戻すことは極めて困難です。心当たりのない請求書、特に「海外からのエアメール」や「英語のメール」、あるいは「特許庁長官ではない名義の振込用紙」が届いた場合は、決してすぐに支払わないでください。もし判断に迷われた場合は、無視をする前に、担当の弁理士にご相談いただくことを強くお勧めします。弊所でも、クライアント様からの真贋確認の相談を随時受け付けております。