米国の知財実務に携わる方にとって、重要な運営変更のお知らせです。米国特許商標庁(USPTO)は、特許発行のプロセスを大幅にデジタル化し、従来の紙の特許証に代わり「eGrants(電子特許証)」への移行を完了しました。これは、特許査定後の手続きやクライアントへの報告実務にも影響する、大きな変更点です。📜 eGrants(電子特許証)とは?eGrantsとは、その名の通り電子的に発行される公式な特許証(PDF形式)のことです。発行日: 2023年4月18日以降に発行されるすべての特許が対象です。入手方法: 従来のように紙の冊子が郵送されるのではなく、特許発行日(火曜日)にUSPTOのオンラインシステム「Patent Center」を通じて即座にアクセスできるようになりました。公式な特許証: この電子的に発行されたPDFが、法的に有効な「公式」の特許証となります。📑 訂正証明書も電子化(eCofCs)このデジタル化の流れは、特許証だけではありません。 2024年1月30日以降、訂正証明書(Certificates of Correction)も「eCofCs」として電子的に発行されており、同様にPatent Centerから入手する形に変更されています。✨ eGrants導入のメリットUSPTOは、このeGrantsへの移行により、以下のメリットがあるとしています。迅速性: 特許発行日に、郵送を待つことなく公式な特許証をすぐに入手できます。効率化: プロセスの合理化とペーパーレス化が促進されます。期間短縮: 印刷や郵送にかかる時間が削減されるため、特許発行までの全体的な期間短縮(ペンデンシーの削減)に貢献する可能性があります。⚠️【重要】式典用コピー(紙)の遅延について「やはり、クライアントには額に入れて飾れるような伝統的な紙の特許証を渡したい」というニーズもあるかと思います。USPTOは移行措置として、公式なeGrantとは別に、従来のような装丁の「式典用コピー(ceremonial copy)」を無料で郵送する対応を続けています。ただし、USPTOの最新の発表(2025年10月14日付)によると、現在、この式典用コピーの発送が最大90日間遅延する可能性があるとのことです。重要なのは、これはあくまで「式典用」のコピーであるという点です。 公式な権利の証明であるeGrant(PDF)の発行は、通常通り Patent Center で行われており、影響はありません。🚀 まとめ米国の特許実務において、特許証は「郵送で届くもの」から「Patent Centerでダウンロードするもの」へと変わりました。権利者やクライアントへは、このeGrant(PDF)が正式な特許証であることを説明し、必要に応じて式典用コピーの到着は遅れる可能性がある旨を伝えておくとスムーズです。