「なぜ、ここまで似せるのか」自社の商品と並べてみれば、一目でわかる。パッケージの色、ロゴの形、フォントの雰囲気。長年かけて磨き上げてきたブランドが、見知らぬ誰かに丸ごとコピーされている。怒りよりも先に、虚しさが込み上げてくる——そんな経験をされた方は、決して少なくないはずです。その模倣品が今、海の向こうから大量に流れ込んでいます。1. 数字が示す「模倣品のリアル」財務省が公表した令和7年の最新統計は、深刻な現状を突きつけています。項目 統計データ(令和7年)輸入差止件数 31,760件(3年連続3万件超)主な仕出国 中国が 82.8% と圧倒的多数侵害対象 商標権侵害が 92.1% を占めるさらに見逃せないのが、流通の変容です。差止件数の 86.5%が郵便物による小口輸入。ECサイトで「ポチッ」と注文すれば、消費者の手元に直接届く時代。一件一件を訴訟で追いかけていては、いくらリソースがあっても足りません。2. 「水際で止める」ことが、なぜ最善なのか模倣品が国内に出回ってからでは遅い。これが、現場を知る権利者の共通認識です。① コストと時間を削減できる「簡素化手続」申立て後の認定手続の約 78.9%が「簡素化手続」で処理されています。輸入者が争わなければ、権利者が個別に呼ばれることなく侵害品と認定され、差し止められます。弁護士費用や訴訟の長期化に疲弊した経験がある方には、この手続きのシンプルさが刺さるはずです。② 「隠してもバレる」税関の目ワッペンでロゴを隠す、他の貨物に紛れ込ませる——悪質業者の手口は年々巧妙になっています。それでも税関はこれらを摘発し続けています。「どうせ通関を抜けてくる」という諦めは、もう必要ありません。③ ブランド保護は「社会的責任」でもある差止物品の中には、発火リスクのあるバッテリー、偽造医薬品、安全基準を満たさない日用品など、使った人を傷つけかねないものが増えています。申立ては自社ブランドを守るだけでなく、消費者を守ることでもある——この「大義」は、対外的な説明にも力を与えてくれます。3. 申立ては「仕組み」として構築する税関が受理している輸入差止申立て件数は 816件と増加傾向にあります。商標権はもちろん、意匠権・特許権に基づく申立ても有効です。真正品の写真や識別ポイントを事前に登録しておくことで、現場職員の判断精度が格段に上がり、見落としも減ります。一度仕組みを作れば、税関が日々の水際対応を担ってくれる。それが輸入差止申立ての最大の強みです。「築いたものを、守る」ために模倣品対策は「やろうと思えばいつでもできる」と後回しにしがちです。しかし、流通してしまった模倣品を一つひとつ回収・排除するコストは、申立てにかかるコストの比ではありません。税関という「水際の砦」を自社のブランド防衛ラインとして機能させること。それが、今この瞬間に取りうる、最も現実的で効果的な選択です。