2026.6.29
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海外訴訟はコスト倒れ?ブランド価値を守る「輸出時の水際対策」という選択肢
1. 海外訴訟の現実と、ブランドホルダーの悩み
多くのブランドホルダーやメーカーを悩ませるのが、日本国内の正規店で買い占めた商品を、海外のECサイト(Amazon、eBay、天猫)で高値転売する個人事業者の存在です。
現地での値崩れや、非正規ルート特有の保管状態の悪さによるクレームなど、ブランド価値へのダメージは深刻です。しかし、だからといって「輸出先の国でいちいち訴訟を起こす」のは、時間もコストも莫大で、個人の転売ヤー相手では完全に割に合いません。
そこで注目したいのが、「日本から出る前に、水際(税関)で止める」というアプローチです。
2. 実は「輸出」も止めることができる税関制度
税関といえば、海外から入ってくるコピー品を止める「輸入差止め」が有名ですが、実は「輸出差止め(輸出差止申立て)」の制度も存在します。
日本の商標法では、偽物だけでなく、一定の条件を満たさない形での「輸出行為」そのものが商標権を侵害すると判断されるケースがあります。日本国内で商標権を持っている企業は、税関に対して「私たちの権利を侵害する商品が輸出されようとしたら、ストップをかけてほしい」とあらかじめ申し立てておくことができるのです。
3. なぜ「正規店で買ったもの」が差し止められるのか?
ここで「自分で買った本物の商品を輸出しているだけなのに、なぜ侵害になるの?」という疑問が湧くかもしれません。キーワードになるのが、商標が持つ「品質保証機能」という考え方です。
商標の品質保証機能とは? 消費者がそのマーク(商標)を見たときに、「このブランドなら、いつも通りの確かな品質のはずだ」と期待させる機能のことです。
たとえ最初は正規店で購入された本物であっても、メーカーが想定していないルートや方法で輸出・流通される過程で、この「品質保証機能」が脅かされる、あるいは害されていると法的に整理できる場合があります。
具体的な理論はケースバイケースで非常にデリケートですが、大枠として「ブランドの信頼や品質が損なわれる形で勝手に輸出・転売する行為は、本物であっても日本の商標権を侵害しているとみなせる場合がある」というロジックを活用します。
4. 輸出差止めスキームの全体像
この防衛策を実行する場合、以下のような流れが一般的なスキームとなります。
国内での権利侵害(商標権侵害)の論理構築 まずは、該当する輸出・転売行為が、日本の商標権(特に品質保証機能の毀損など)を侵害しているという法的構成を整理します。
税関への輸出差止申立て 財務省・税関に対して、侵害の根拠となる証拠や、転売事業者が用いる荷姿・ルートなどの識別情報を添えて、正式に差止めの申立てを行います。
税関による受理・水際での監視 申立てが受理されると、税関の監視リストに登録されます。該当する事業者が商品を海外へ輸出しようとした際、税関のチェックでストップがかかる可能性が生まれます。
これにより、海外の現地に商品が到着して拡散してしまう前に、日本の港や空港の段階で一網打尽にするルートを遮断する壁を作ることができます。
5. 泣き寝入りする前に「日本国内での水際対策」の検討を
海外での知財トラブルは、現地での対応ばかりに目を奪われがちですが、「日本国内にいる段階で、日本の法律(商標法)と税関の手続きを使って出口を塞ぐ」という逆転の発想が極めて有効なケースがあります。
「正規店で買われたものだから止められない」「相手が個人だから追いきれない」と諦める前に、こうした日本の知財制度をフル活用した防衛スキームの構築を考えてみてはいかがでしょうか。
