企業の顔である「ロゴマーク」。そこに使われている「色」には、創業者の想いやブランドのコンセプトがぎっしりと詰まっていることと思います。中国市場への展開を見据え、いざその大切なロゴを中国で商標登録しようと考えたとき、多くの方がこう考えます。 「もちろん、日本の登録と同じこの鮮やかなカラーで出願しよう」と。しかし、知財戦略の観点から申し上げます。 中国でロゴを商標登録するなら、特段の事情がない限り「白黒(色彩指定なし)」での出願を強くお勧めします。なぜ、あえて色を抜く必要があるのでしょうか?そこには、中国特有の厳格な商標実務と、将来のビジネス展開を見据えた重要な理由があります。1. 「カラーで登録」が招く、不自由とリスク中国の商標制度は、登録された商標を「そのままの姿」で使用することを非常に厳格に求めます。もし、ロゴの色彩を指定して(カラーで)登録した場合、あなたの権利は原則として「その色の組み合わせ」に限定されてしまいます。 例えば、将来ブランドイメージを一新してロゴの色を変えたり、クリスマスなどの期間限定キャンペーンで色違いのロゴを使用したりした場合、それが「登録商標の正当な使用」と認められない可能性があります。さらに恐ろしいのは「不使用取消(三撤)」のリスクです。 中国では、登録から3年間正当に使用されていない商標は、第三者の請求によって取り消されてしまう制度があります。カラーで登録したのに別の色ばかりで使っていると、「登録された商標は使われていない」とみなされ、せっかく取得した権利を失ってしまう危険性があるのです。2. 「白黒」で出願する最大のメリット:究極の柔軟性一方で、色彩を指定せずに「白黒」で出願・登録した場合はどうなるでしょうか。中国の実務上、白黒の商標は「あらゆる色彩に対して権利が及ぶ」と解釈されます。 つまり、一度白黒で権利を押さえてしまえば、赤で使おうが、青で使おうが、将来グラデーションに変更しようが、ロゴの「形状(デザイン)」さえ同じであれば、すべてあなたの商標権の保護範囲内となります。不使用取消のリスクを大幅に減らしつつ、将来のブランド展開に合わせた柔軟な運用が可能になる。これこそが、白黒出願の最大のメリットです。3. 国際出願(マドプロ)を利用する場合の注意点費用を抑えて複数の国に出願できる「マドプロ(国際出願)」は非常に便利な制度です。しかし、ここにも落とし穴があります。マドプロは、日本の基礎商標と「同一」であることが絶対条件です。もし、日本の基礎商標がカラー指定である場合、マドプロ経由で中国に出願すると、自動的に中国でも「カラー指定」として審査・登録されてしまいます。途中で「中国だけ白黒にしてくれ」という変更はできません。日本の実務感覚で「カラーで出しておけば大丈夫だろう」と安易に国際出願をしてしまうと、中国市場では「特定の色に縛られた、身動きの取りづらい権利」になってしまうのです。 このような事態を防ぐため、中国向けにはあえてマドプロを使わず、直接「白黒」で出願するという選択肢も、強力なビジネス戦略となります。最後に特許や商標の取得は、それ自体がゴールではありません。皆様の大切なビジネスを守り、事業目的を達成するための「手段」に過ぎないのです。「よいアイデアが強い権利を作るのではなく、強い権利がよいアイデアを守る」私たちはそう信じています。中国という巨大な市場で、皆様のブランド(アイデア)が他社に脅かされることなく自由に羽ばたけるよう、実務の現場から最適な「強い権利」の形をご提案いたします。中国への商標出願、また国際的なブランド戦略についてご不安な点がありましたら、TANAKA Law & Technologyまで、どうぞお気軽にご相談ください。