権利者の方へ
特許権者等が自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対して侵害認定手続を執るべきことを申し立てることができます.
従来より侵害するおそれのある貨物を発見した場合には、税関は職権により侵害認定手続を開始することもできます.
しかし膨大な貨物の中からそのような貨物を発見することは容易ではありません.
そこで権利者等自らが侵害するおそれのある貨物の発見に有用な情報を提供してそのような貨物の発見を容易にし認定手続の開始を促すことができます.
申立てに際しては貨物の輸入が侵害を構成することを疎明するために必要な証拠の提出が必要です.
弁理士等が作成した鑑定書を証拠として提出することが一般的です.
差止めの申立てがあると、その内容を税関ホームページに公表する等して利害関係者に意見を提出する機会が与えられます.
意見が提出された場合はその意見も踏まえたうえで、侵害の事実を疎明するに足りる証拠があるかどうかの審査が行われます.
利害関係者から意見が提出された場合の他、必要と認めるときは専門委員に意見を求め、申立てを受理するか否かが決定されます.
申立ての対象となるのは、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・著作隣接権及び育成者権を侵害する貨物の他、不正競争防止法(第2条1項1号から3号)に違反する貨物です.
無審査で登録された実用新案権については、実用新案技術評価警告書及び警告書の提出が必要です.
不正競争防止法による申立てについては、経済産業大臣意見書を提出する他、第3号に規定する形態模倣品の場合は侵害行為を警告書等の提出が必要です.
輸入者の方へ
麻薬・拳銃と同様に商標権・意匠権・特許権などの知的財産を侵害する貨物は輸入禁制品として税関における取締の対象です.
海外からの輸入が増えるに従い、知的財産を理由に通関できないケースが増えています.
麻薬や拳銃は一見すれば、それと分かりますが、知的財産の場合、侵害と判断するためには、高度な専門的な判断が必要です.
税関で侵害と言われたからといって、それが正しいとは限りません.
知的財産の侵害を判断するためには、非常に高度な専門性が求められるからです.
何もしなければ、貨物は没収・廃棄となります.
反論したからといって報復がある訳ではありません.
なにより怖いのは、そこで黒と判断されると、その情報が残ってしまい、別のものを輸入した場合でも、検査の対象となることです.
故意に模倣品を輸入した場合は救済の余地はありません.
そうでない場合、認定手続開始通知書が届いても諦めずに、認定手続きにおいて反論すべき点は反論し、正当性を主張することが大事です.
「認定手続」が行われると、少なくとも一ヶ月は通関できません.
一日でも早く貨物が通関できるよう最善を尽くします.