革新的なアイデアを特許として権利化したいと考えたとき、大きなハードルの一つとなるのが「費用」です。特許出願料、審査請求料、そして権利を維持するための特許料(年金)と、多くの場面でコストが発生します。特に個人発明家の方や、設立間もないスタートアップ企業にとって、この費用負担は決して軽くありません。しかし、そうした発明者や企業を支援するため、特許庁が「手数料の減免制度」を用意していることをご存知でしょうか?要件を満たせば、審査請求料や特許料(1年~10年分)が1/2や1/3に軽減される、非常に強力な制度です。2024年4月1日からも新しい制度(※注1)がスタートしており、イノベーションの促進が図られています。ただし、この制度には大きな注意点があります。 それは、「個人」区分での利用が、一般的に考えられているよりもずっと難しいという点です。今日は、この特許庁の減免制度について、特に「個人」区分の落とし穴と、実際に誰が活用しやすいのかを解説します。(※注1:本記事は2024年4月1日施行の制度に基づいています。詳細は特許庁の該当ページをご確認ください。)【最重要】「個人」区分の落とし穴減免制度の対象者には、大別して「大学・研究機関」「中小企業(スタートアップ含む)」そして「個人」などの区分があります。ここで、フリーランスの発明家や個人事業主の方が、「自分は法人化していないから『個人』区分を使えるだろう」と考えてしまうケースが非常に多いのですが、これは大きな誤解です。特許庁の減免制度における「個人」とは、一般的な「個人発明家」や「個人事業主」を指すものではありません。制度が定める「個人」の主な要件は、以下の通りです。市町村民税が「非課税」であること(または、市町村民税の「均等割の額」のみの納付であること)(または、生活保護法による「生活扶助」を受けていること)事業を行っている個人は、まず使えないお分かりでしょうか。 本制度の「個人」区分は、「事業として収益を上げている個人事業主」を対象にしたものではなく、主に「経済的に困窮している方」を支援するためのセーフティネット的な側面が強いのです。したがって、ご自身の発明で事業を行おうとしている個人発明家や、フリーランスとして活動されている方が、この「個人」区分の要件(=市町村民税非課税など)を満たすことは、現実的にはほとんどありません。では、誰が「本当に」活用できるのか?「個人」での利用が難しいとなると、がっかりされるかもしれません。 しかし、この制度の本命は「中小企業」区分です。個人の場合は「所得」が要件でしたが、中小企業の場合は「資本金」「従業員数」「設立年数」といった「事業の規模や形態」で判断されます。特に「スタートアップ(設立10年未満の中小企業)」に対しては、審査請求料や特許料が1/3に軽減されるなど、非常に手厚い支援が用意されています。個人事業主として活動していて「個人」区分に該当しなかった方でも、法人成り(会社設立)して「中小企業」の要件を満たせば、減免の対象となるケースは多くあります。「自分は個人だから減免は無理だ」と諦めるのではなく、「自社の(あるいは、これから設立する会社の)規模が、中小企業の減免要件に当てはまるか?」という視点で確認することが非常に重要です。まとめ特許庁の減免制度は、審査請求料や特許料を1/2や1/3にできる強力な制度。【最重要】「個人」区分は「市町村民税非課税」などの所得要件が厳しく、一般的な個人発明家や個人事業主の利用は極めて困難。本命は「中小企業(スタートアップ)」区分。「設立年数」や「資本金」などで判断されるため、活用できる企業は多い。ご自身のアイデアを守り、事業を加速させるために、こうした支援制度を賢く活用することは非常に重要です。「自分の場合は対象になるのだろうか?」「スタートアップとして減免を受けたい」 そうお考えの方は、出願手続きと併せて、ぜひ一度、我々のような特許の専門家にご相談ください。 お客様の状況を伺い、利用可能な制度の調査から申請手続きまで、トータルでサポートいたします。