中国で自社のロゴやキャラクターを商標出願しようとしたら、すでに悪意のある第三者に登録されていた…。これは中国ビジネスで非常によくある悪夢のようなシナリオです。しかし、そのロゴマークの「著作権」があなたの手元にあるならば、諦めるのはまだ早いです。そんなときでも、「著作権」を武器にしてその商標を無効化し、取り戻す戦略について解説します。💡 なぜ「著作権」が「商標」に効くのか?「商標権」と「著作権」は全く別の権利です。しかし、中国の商標法には、この戦略の鍵となるルールがあります。それが「在先権利(せんがんけんり)の保護」です。中国商標法のルール(要点): 「他人の先行する合法的権利(在先権利)を侵害する商標は、登録してはならない」そして、この「在先権利」の代表格が『著作権』なのです。あなたの会社のロゴは、商品を示す「商標」であると同時に、デザイナーが創作した「美術作品(著作物)」でもあります。もし、悪意のある第三者が商標出願した日よりも前に、あなたがそのロゴの著作権を持っていたことを証明できれば、「その商標登録は、私の著作権を侵害している!」と主張し、登録を阻止または無効化できるのです。🛠 「著作権」を武器にする3ステップ戦略では、具体的にどうすればよいのでしょうか。流れは以下の3ステップです。ステップ1:【証拠固め】著作権を「登記」するまず、あなたのロゴやキャラクターを「美術作品」として、中国の著作権当局である「中国版権保護センター(CPCC)」に著作権登記(登録)します。目的: 著作権は本来、創作した瞬間に発生しますが、裁判や行政手続きで「いつ」「誰が」作ったかを証明するのは困難です。効果: CPCCが発行する「著作権登記証書」)(登録申請から2ヶ月程度で発行されます)が、あなたの著作権を証明する強力な公的証拠となります。ステップ2:【攻撃】相手の商標に法的措置を取る「著作権登記証書」という武器を手に入れたら、商標を横取りした相手に対し、以下の法的措置を取ります。A. 相手がまだ「出願中」の場合 → 異議申立 相手の商標が審査を通過し、公告期間中(3ヶ月間)であれば、「異議申立」を行います。 (主張:「この商標は当社の著作権を侵害しているので、登録を認めるな」)B. 相手がすでに「登録済み」の場合 → 無効審判 すでに登録されてしまっている場合は、「無効審判」を請求します。 (主張:「この登録商標は当社の著作権を侵害しているので、無効にせよ」)ステップ3:【奪還】自分の商標を再出願する異議申立や無効審判が認められ、相手の商標が拒絶または無効になったら、障害はなくなりました。 改めて、あなた自身の名前で商標を出願し、正式な登録を目指します。⚠️ この戦略の重要チェックポイントこの方法は強力ですが、万能ではありません。以下の点に注意してください。重要:著作権は「商標の代わり」ではない 著作権を登記しても、それ自体が「商標権」の代わりになるわけではありません。あくまで、相手の商標権を「取り消すための武器」として使うものです。最終的に目指すのは、ステップ3の「自分での商標登録」です。「創作性」のないロゴは守れない 著作権で保護されるのは「創作的な表現」です。そのため、以下のようなものは、この戦略が使えない可能性が高いです。NG例: 標準的なフォントで社名を書いただけの文字列商標(例: 「TANAKA」)NG例: 単純すぎる図形(例: ただの丸や四角)逆に、デザイン性の高いロゴマーク、マスコットキャラクター、独自にデザインされた書体(ロゴタイプ)などは、この戦略が非常に有効です。まとめ:最強の防御は「早期の著作権登記」中国での商標ハイエナ被害は深刻ですが、デザイン性の高いロゴであれば「著作権」で対抗できる可能性が十分にあります。中国ビジネスを展開するなら、商標出願と同時に、あるいはそれよりも早く、ロゴが完成した時点で「中国版権保護センター(CPCC)」への著作権登記を済ませておくこと。これが、あなたのブランドを守るための最強のリスクヘッジとなります。