「中国の特許出願、もはや実用新案だけの問題ではない」これまで「実用新案は減っているが、特許(発明)は増えているから健全だ」と言われてきました。しかし、その定説は2024年に入って完全に覆されました。最新の統計データ(2024年1月〜9月)によると、実用新案だけでなく、特許(発明)の登録件数までもが前年同期比で大幅に減少しており、両者ともに9ヶ月連続でマイナスを記録するという事態になっています。これは単なる調整ではなく、中国知財市場の構造そのものが激変している証拠です。1. データで見る「聖域なき減少」これまでは「実用新案=減少」「特許=増加」という図式でしたが、2024年のデータは全く異なる景色を見せています。特許(発明): 前年同期比で 約20〜30%の減少実用新案: 前年同期比で 約20〜25%の減少両方のグラフが右肩下がりになるのは、近年の中国では極めて異例のことです。2. なぜ「特許(発明)」まで減り始めたのか?実用新案の減少理由は「進歩性審査の導入」で説明がつきますが、なぜ技術的価値が高いはずの特許(発明)まで減っているのでしょうか? 理由は3つあります。① 「非正常出願」対策が特許にも波及 当初は実用新案を中心に行われていた「非正常出願(質の低い出願)」の取り締まりが、特許(発明)にも厳格に適用され始めました。AIによる自動生成や、補助金目当てと思われる出願は、発明であっても容赦なく排除されています。② 補助金制度の「完全終了」 2025年をターゲットに進められてきた補助金廃止の動きが、いよいよ最終局面を迎えています。「出願すれば(特許になれば)金になる」というインセンティブが完全に消滅したことで、名ばかりの特許出願が激減しました。③ 経済減速による「選別」の加速 中国国内の景気減速を受け、中国企業自身がR&D予算や知財予算を削減しています。これまでは「とりあえず出願」していた発明も、本当に事業に必要なものだけに厳選するようになり、出願総数が圧縮されています。3. 日本企業への影響と対策「特許も減っている」という事実は、日本企業にとって何を意味するのでしょうか。審査はむしろ「通りにくく」なっている 件数が減っているからといって、審査が緩くなっているわけではありません。むしろ逆です。「量より質」の審査基準が特許(発明)にも厳格に適用されているため、少しでも記載不備や進歩性の欠如があれば、以前より厳しい拒絶理由が通知されます。今後の戦略:「中国なら通るだろう」は禁物: 日本や欧米と同じ、あるいはそれ以上に厳しい基準で明細書を作成する必要があります。権利化コストの再見積もり: 審査が厳格化しているため、拒絶対応の回数が増え、中間処理費用がかさむ傾向にあります。予算には余裕を持つべきです。おわりに「9ヶ月連続減少」は、中国が「知財大国」の看板を捨ててでも、「知財強国(中身のある国)」へ脱皮しようとしている痛みを伴うプロセスです。 この激変期において、過去のセオリーは通用しません。最新の動向に基づいた、より緻密な出願戦略が求められています。