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意匠のよくある疑問

特許ではなくて意匠を選ぶメリットはあるのですか

発明を独占する代わりに発明の内容を公開するのは許せるが、発明が特許にならないのに内容が公開されるのは不公平という意見が少なくありません.

このため最近では特許出願はせずにノウハウとして秘密にしておくことを選ぶ人もいます.

公開を嫌う場合でも、絶対に公開されたくないと考える場合と、特許になるなら公開しても良いと考える場合があります.

もし後者の考えなら、ぜひ意匠登録出願を検討してください.


技術に特徴があるから特許を出願するという方法ではなく、技術の特徴が外観に現れているから、その外観を意匠登録出願するという方法です.

同じ対象でも特許で保護するか意匠で保護するかによって、公開というデメリットを必要最小限に抑えることができます.


特許出願すれば特許にならなくても内容が公開されますが、意匠登録出願すれば意匠登録されない限り公開されることはありません.

しかも意匠登録出願を選べば公開の時期を遅らせる秘密意匠制度を利用することもできます.

秘密意匠制度を利用すれば公開の時期を最大で3年間も遅らせることができます.

意匠と立体商標はどちらを選べばいいのですか

ホンダの「スーパーカブ」や「ジャポニカ学習帳」など、これまで意匠として登録されることが多かった商品のデザインが、今後は立体商標としても登録される可能性が増えてきました.


ただ、商品のデザインを立体商標として出願するときは、その商品のデザインを将来も変更せずに使い続けるかどうかを考えておく必要があります.


「スーパーカブ」にしても「ジャポニカ学習帳」にしても、長い間、デザインを変えていません.

つまりデザインを変更するような商品の場合、立体商標は適さないということになります.


意匠と商標で大きく違う点は、登録になったあとの取消制度の有無にあります.

モデルチェンジで商品のデザインを変更することは良くあることですが、立体商標として登録した商品のデザインを変更して使用すると、商標登録されている元々の商標を使っていない状態になります.

商標の場合、登録された商標を実際に使っていないと取り消されることがあります.

流行があるデザインを意匠登録するメリットはあるのですか

製品の機能を改良し続けることは必要ですが、デザインは新しさを求めずに同じ形を使い続けることが大事です.

累積的に進歩する技術に対して20年程度の周期で繰り返すのがデザインです.

20年前の技術が良いということはありませんが、20年前のデザインが斬新ということはよくあることです.


であるならばデザインは変えずに製品の機能のみを進化させれば良いという結論にたどり着きます.


知的財産という側面から見ても同じデザインを使い続けることのメリットを見出すことができます.

同じデザインを使い続けていくと、製品のデザインそのものがブランドになります.

エルメスのバーキン、メルセデスのフロントグリル、コカコーラの瓶など、デザインを見ただけで製品の出所がわかります.

製品の出所がわかるほどまでに確立されたデザインに対して、現在の知財制度は、立体商標という最強の武器を与えています.

立体商標が最強の武器である理由は、権利が半永久的に存続するからです.

立体商標以外の特許や意匠は有効期限があるのに対して、商標は更新により半永久的に存続させることができます.

そのなかでも立体商標は、登録審査が極めて難しく、現在、日本で登録されている立体商標は、不二家の「ペコちゃん」人形、乳酸菌飲料「ヤクルト」の容器、ホンダの「スーパーカブ」など、数えるほどしかありません.

いずれのデザインも一見しただけで出所がわかる製品です.

同じデザインを使い続けると最強のブランドを手に入れることができます.

デザインを長いあいだ独占使用させるためのツールが意匠権です.

食品も意匠登録できるのですか

物品の外観を保護する意匠権で保護された製品デザインのほとんどが衣服・機器・機械などの工業製品で占められていますが、なかには寿司、ケーキ、たこ焼きなどの食品も含まれています.

「用途・機能が同じならデザインが良い方が選ばれる」と言うように、用途や機能での差別化が難しいモノはデザインの良し悪しが需要を左右します.

食品の世界も「美味しい」ことはもちろん、見た目の良さも大切な要素なのですが、意匠権を取得している食品はごくわずかです.

食品の意匠権取得は難しいという固定観念や、食品自体ではなく食品のパッケージの意匠権を取得するという食品業界の慣習などが食品の意匠権が少ない理由として考えられます.

しかし、「美味しさ」を模倣することは難しくても「見た目」のデザインを模倣することが簡単な食品にあって食品自体のデザインを意匠権で保護することは、価格競争に巻き込まれるリスクを排除し、継続的な独占実施による食品のブランド形成にも寄与するなど、メリットは少なくありません.

「光」の意匠について教えてください

高層ビルのライトアップにみられるように光で装飾された建築物が増えています.

昼間の印象とは全く違う印象を与える「光」

建築物ですが、このような建築物はこれまで意匠法の保護対象ではありませんでした.


不動産を理由に建築物が意匠法が保護する物品に含まれないこと、そして個体でないことを理由に光が物品に含まれないこと、がその理由です.


最近の法改正により、不動産が物品に含まれることになりました.

さらに光が物品に含まれるように審査基準が改正されました.


この2つの改正により、今後は都市空間の演出に欠かせない建築物が意匠登録の対象になります.


さて「光」が意匠登録の対象になることにより、もう一つ見逃せないことがあります.

それは公知デザインの意匠登録の可能性です.


光の点灯により表れる模様・色彩が意匠の要素に加わることで、これまで公知のデザインだった物品であっても、「光」の点灯態様を工夫して物品の外観を設計すれば、新たな意匠として意匠登録の対象になり得ます.


例えば自動車の前照灯をみてみましょう.

単純に前方を照灯するだけではなく、近年は、線形に点灯させたり、点灯・点滅を繰り返して動的に照灯させる前照灯を採用する自動車が増えてきました.


これまで消灯した状態でしか意匠として認められなかったのに対し、これからは点灯により表れる模様・色彩を付加した状態も意匠として認められるようになります.

意匠権で模倣品対策するメリットはなんですか

模倣品対策を効率よく行うためには特許・実用新案・意匠・商標などの知的財産権を使うことです.


すでに知的財産権を取得している場合は、権利のポートフォリオを模倣品に合わせて最適化していきます.


知的財産権がなければ権利の取得から始めるのですが、どの権利をどのように取得するかという検討が必要です.


新しいアイデア・デザインが生まれたから権利を取得するという一般的な動機と異なり、模倣品の製造・販売をやめるように相手と交渉する、模倣品を製造している工場の摘発を行政に依頼する、という模倣品対策では権利の存在自体が重要ということになります.


意匠や実用新案より特許が強い、無審査の実用新案は使えない、という考えから、特許の取得を目指すことが多いのですが、権利の存在自体が重要な模倣品対策において、取得の難易度が高い特許の取得にこだわる必要はありません.


また早く始めるほど効果がある模倣品対策では、取得までに数年が必要な特許の取得はおすすめできません.


特許以外の知的財産権である意匠や実用新案は、取得の難易度が低く、取得までに必要な時間が短いという点で模倣品対策に適した権利であるといえます.


取得の難易度については、審査の有無が大きく影響します.

実体審査がある特許に対して日本では実体審査なしで権利が付与されるのが実用新案です.


実体審査がないため取得までの時間が短くなります.


意匠については実体審査があるにもかかわらず取得までの時間が短く、日本では出願から登録まで約6ヶ月です.


無審査で登録される権利は安心できないという意見があります.


しかし特許審査は、新規性や進歩性において一応の審査をしたというだけに過ぎず、完全な権利を保証しているわけではありません.

意匠でブランドを守れるのですか

ブランドを守る知財の代表は商標です.

しかし事業にブランド力をもたらすのは商標だけではありません.

商品のデザインもブランド力を与える知財の一つです.


デザインが優れている商品は、用途機能が同じ大量の商品群のなかに埋もれることはありません.

用途機能が同じ商品であれば価格を下げた差別化が必要なのに対して、デザインが優れた商品は、価格を下げるどころか価格を上げた差別化が可能になります.


商品デザインを保護する「意匠」という知財は、ブランドの構築に寄与するだけではなく、技術的な側面からも事業を守るためのツールとして活用することもできます.

意匠で登録するのがよいのか立体商標がよいのか迷っているのですが

同じモノでも、意匠として登録する方法と、立体商標として登録する方法があります.


身近なノートという商品が意匠で登録されていたり立体商標で登録されていたりします.

日本で有名なノートと言えば「ジャポニカ学習帳」

「ジャポニカ学習帳」は立体商標として登録されています(商標登録第5639776号)


ノートの大きさや形状は規格で決まっており、ノートの形状に特徴はないので、形状自体に識別力はありません.

立体商標として登録された理由は、ノートの表紙に図形デザインが施されていたことです.

立体商標だからと言って、形状自体に識別力がある必要はないのです.


商標の態様には、文字、図形、記号、立体形状のみからなる商標の他、文字、図形、記号、立体形状の組合せからなる結合商標があります.

立体商標として登録された「ジャポニカ学習帳」は、立体形状と図形とが組み合わされた結合商標ということになり、図形部分に識別力がある商標です.


もし商品の図形デザインに特徴があるなら、意匠で登録することができます.

「キャンパスノート」は意匠として登録されています(意匠登録第1434427号)


同じノートでも、立体商標として登録する方法と、意匠として登録する方法があります.

商品の形状自体に特徴がなく、商品に施された図形デザインに特徴がある場合、「キャンパスノート」のように意匠として出願する他、「ジャポニカ学習帳」のように立体商標として出願する方法があります.

意匠で店舗外観を登録できるのですか

アップルストアを始め独創的な外観の店舗が日本でも増えてきました.

店舗のような空間デザインはこれまで日本の知的財産法の保護が及び難い対象でしたが、徐々に空間デザインを保護する体制が整ってきました.


これまで意匠権の保護対象は動産に限られていたこともあり、不動産である建築物は意匠法の保護対象ではありませんでした.

不動産である建築物を保護対象に含める改正意匠法が閣議決定され、2020年4月施行の改正意匠法により建築物が意匠法の保護対象になりました.

さらに、店舗外観だけではなく店舗内装も保護対象になりました.


店舗の外観の保護はこれまでも不正競争防止法が担ってきました.

しかし不正競争防止法の適用を受けるためには店舗外観が周知・著名性を獲得している必要がありました.

したがって周知・著名性を獲得する前のスタートアップの段階では不正競争防止法の適用を受けることができないという課題がありました.


店舗外観を意匠で保護することにより、これまで適切な保護を受けることができず模倣対策がとり難かった店舗外観の保護が強化されることになります.

意匠は権利範囲が狭いから使えないという意見を聞くのですが

文言解釈で権利範囲が決まる特許に比べて意匠は図面を見れば内容は明らかです.

似ている似ていないという判断をするときも、分かりやすい意匠は類似範囲も狭く判断されがちです.


ただし意匠は複数の意匠を関連させて権利範囲を拡げていくことができます.

関連意匠制度を使えば、類似という曖昧な外縁を複数の意匠を駆使して拡げていくことができます.

一つの意匠権の権利範囲はたしかに狭いかもしれません.

しかし複数の意匠を登録して権利範囲を自在に拡大していくことができるのも意匠の特徴です.


なお類似という曖昧さが実は他社への牽制につながっているということも見逃すことはできません.

どこまでが類似する範囲かは最終的な司法判断を待つまで確定しないからです.

類似範囲の解釈を巡って侵害訴訟で争うよりも和解解決を選ぶ割合が多いのも意匠の特徴です.

審査で拒絶された特許を意匠に変更することはできるのですか 

新しい形状の発明をしたので特許を出願をしたものの審査で拒絶されてしまったということは決して珍しいことではありません.

審査で拒絶されても審判で覆る可能性が残されています.

とはいえ審判で争うためにはさらに費用がかかってしまいます.


審判で争う方法以外に意匠に変更して意匠審査を受けるという方法があります.

技術的な特許と審美的な意匠という違いはあるものの、特許で登録できなくても意匠なら登録される可能性があります.


特許から意匠に変更するためには、特許明細書・図面に、意匠出願するための形状が具体的に表れていなければなりません.

特許から意匠に変更する可能性があるなら、最初から意匠出願で使える図面を特許図面に記載しておくのもいいでしょう.

意匠が登録されるまでの時間はどれくらいですか

出願から登録査定が通知されるまでの期間は約半年です.

早ければ3ヶ月で登録査定が通知される意匠もあります.


半年以内に審査結果がわかる意匠なら、審査の結果を待ってから外国出願の要否を決めることができます.

意匠を外国に出願するときの優先期間は日本の出願日から6ヶ月です.

審査が早い意匠は外国出願の計画も立てやすくなります.